2026/5/17
横浜市で、人命救助のために救急隊がマンションの玄関扉を破壊した事案について、裁判所が横浜市に損害賠償を命じたという報道がありました。
報道によると、2022年、新型コロナ療養中の居住者と数日間連絡が取れないとの119番通報を受け、救急隊が出動。
現場では室内から応答がなく、管理会社とも連絡が取れない状況だったため、通報者の了承を得て玄関扉を破壊し、室内へ進入しました。
しかし、室内に居住者はおらず、結果としてドアだけが破損。修繕費用を負担したマンションオーナーが横浜市を提訴し、裁判所は横浜市に賠償を命じました。
判決では、
「救助行為自体はやむを得なかった」
としながらも、
「オーナーが無補償で財産被害を受け入れるべき立場ではない」
と判断しています。
この判決には、さまざまな意見があると思います。
私は元救急の現場にいましたが、実際にこうした判断を迫られる場面はあります。
こうした状況では、
「中で倒れているかもしれない」
という可能性を考えながら活動します。
しかし、現場は“結果”が分かっている状態で活動しているわけではありません。
結果的に要救助者がいないこともあります。
一方で、進入が遅れれば、救命の機会を失う可能性もあります。
だからこそ、救急・消防の現場では、限られた情報の中で最悪の事態を想定し、人命救助を最優先に判断しています。
今回の事案でも、確認が取れない以上、現場としては極めて難しい判断だったと思われます。
一方で、裁判所が示した
「財産損害を誰が負担するのか」
という論点も重要です。
今回の判決は、救助行為そのものを否定したというより、
「必要な救助であっても、その損害を私人だけに負わせるべきではない」
という考え方を示したものとも受け取れます。
人命救助と財産権保護。
その両立を、制度としてどう支えていくのか。
改めて考えさせられる判決だったように感じます。

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