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川越市鯨井のなぐわし公園に約8.37億円の土地取得 利用数と、毎年の市負担をどう考えるか

2026/6/10

川越市議会の6月定例会に、なぐわし公園整備事業用地の取得に関する議案が提出されています。

取得予定価格は、8億3,699万5,680円です。

金額だけを見ると、非常に大きな買い物です。

公園や健康施設は、市民の健康づくりや交流、防災などに役立つ公共サービスです。一方で、その整備や運営には市民の税金が使われます。

必要な施設だからこそ、「利用実態はどうなっているのか」「負担に見合う効果があるのか」を確認する必要があると思います。

取得するのは約1万4,117平方メートル

今回、市が取得しようとしているのは、川越市大字鯨井にある18筆、合計14,117.27平方メートルの土地です。

取得予定価格は約8.37億円。
1平方メートル当たりでは約5万9,289円です。

契約相手は川越市土地開発公社です。

土地開発公社が先に取得していた土地を、市がなぐわし公園整備事業用地として取得するものです。

川越市は、この区域を健康交流広場などとして活用する方針を示しています。

公園の未整備区域を取得し、市民が運動や交流に使える場所を増やすこと自体には、一定の意義があります。

ただ、約8.37億円という金額を投じる以上、その必要性や今後の整備費、完成後の維持管理費まで含めて見ていく必要があります。

PiKOAの年間利用者は約29万人

なぐわし公園には、温水利用型健康運動施設「PiKOA」があります。

温水プール、トレーニング室、スタジオ、温浴施設、多目的ホールなどを備えた施設です。

川越市の施設カルテによると、年間の入館者数は次のように増えています。

令和4年度は27万3,763人。
令和5年度は28万2,819人。
令和6年度は29万66人。

令和6年度は309日開館しているので、単純に割ると1日平均約939人です。

数字だけを見ると、かなり多くの人に利用されている施設に見えます。

ただし、29万人は「29万人の市民」ではない

ここで注意したいのが、「利用者数」の数え方です。

この約29万人は、異なる29万人が利用したという意味ではありません。

市の資料では、1回ごとの利用者と定期利用者の入館回数を積み上げています。

同じ人が週に何度も通えば、そのたびに1人として数えられます。つまり、実際には延べ利用回数に近い数字です。

定期的に運動を続けることは、健康施設の目的に合っています。常連の存在自体が問題なのではありません。

ただし、約29万人という延べ人数だけを見て、「幅広い市民が利用している」と結論づけることもできません。

私が知りたいのは、実際に何人の異なる人が利用しているのかです。

市内の利用者は何人なのか。
市外の利用者はどれくらいいるのか。
年齢層はどうなっているのか。
年間に1回だけ利用する人と、週に何度も利用する人はそれぞれ何人なのか。

こうしたデータがなければ、本当に幅広い市民に開かれた施設なのか、それとも一部の常連利用者へのサービスに偏っているのかを判断できません。

常連利用者を否定したいわけではありません。

むしろ、継続的に運動して健康を維持することは大切です。

しかし、市民全体の税金で支える施設である以上、「延べ人数が多い」という説明だけでなく、どれだけ幅広い市民に利益が届いているかも説明してほしいと思います。

周辺7市町の人も市内料金で利用できる

PiKOAでは、市外居住者の利用料は原則として市内料金より2割高くなっています。

一方で、坂戸市、鶴ヶ島市、日高市、川島町、毛呂山町、越生町、鳩山町に住む、通勤する、または通学する人は、川越市民と同じ料金で利用できます。

これは周辺自治体との公共施設相互利用の仕組みによるものです。

川越市民も、相手自治体の施設を同じような条件で利用できるのであれば、広域連携として一定の合理性はあります。

ただ、PiKOAの整備や運営に川越市が毎年多額の税金を負担していることを考えると、市外利用者を市民と同じ料金にすることについて、市民にわかる説明は必要だと思います。

相互利用によって川越市民にはどの程度の利益があるのか。
自治体間で費用の精算は行われているのか。
PiKOAの市内利用者と市外利用者の比率はどうなっているのか。

制度として決まっているから終わりではなく、税負担とのバランスを検証する必要があります。

「毎年3億円以上の赤字」と単純には言えない

施設カルテを見ると、令和6年度の市の収入は約488万円、支出は約3億7,739万円で、差引約3億7,251万円のマイナスとなっています。

これを見ると、毎年巨額の赤字を出しているように見えます。

ただし、ここは少し複雑です。

PiKOAはPFI方式で運営されています。

利用者から受け取るプールやトレーニング室などの料金は、民間事業者側の収入になります。一方、市は施設の整備・維持管理・運営サービスの対価として、事業者にサービス購入料を支払っています。

令和5年度の事業者側の資料では、利用料金収入が約1億2,911万円、市からのサービス購入料が約2億3,362万円でした。これに対する事業者の支出は約3億3,729万円で、事業者側では約2,543万円のプラスとなっています。

したがって、「民間事業者が毎年3億円以上の赤字」ということではありません。

正確には、川越市が公共サービスとして毎年3億円台の費用を負担しているということです。

問題は、黒字か赤字かという単純な話ではありません。

その税負担に見合う市民サービスが提供されているかです。

公共施設を利回りだけで判断してはいけない

土地や建物を持ち、毎年多額の費用を負担しているのに、直接の市収入が少ない。

民間の投資として考えれば、利回りが非常に低い資産に見えます。

ただし、公共施設を不動産投資と同じ基準だけで判断することはできません。

公園や健康施設には、市民の健康増進、介護予防、地域交流、子どもの運動機会、防災など、料金収入だけでは測れない効果があります。

仮に施設利用によって病気や介護を予防できれば、将来的な医療・介護費の抑制にもつながる可能性があります。

市民が安心して運動できる場所を提供すること自体も、行政の役割の一つです。

そのため、「赤字だから不要」と直ちに結論づけるべきではありません。

一方で、「市民サービスだから赤字でも仕方がない」と考えるだけでも不十分です。

必要なのは、公共的効果の見える化

私は、次のようなデータを市が公表する必要があると思います。

実利用者数。
市内・市外別の利用者数。
年齢層別の利用状況。
利用頻度別の人数。
初めて利用した人の数。
健康増進や介護予防への効果。
利用者1人当たりの実質的な市負担。
周辺の民間スポーツ施設との役割分担。

これらを明らかにすれば、単に「29万人が利用しています」という説明から一歩進み、施設が市民にどのような価値を生んでいるかを評価できます。

逆に、利用者が一部に固定され、公共的な効果も十分に説明できず、財政負担だけが増えているのであれば、将来的には規模縮小や運営方法の変更も選択肢に入るでしょう。

公共施設は、一度造れば終わりではありません。

人口減少や施設の老朽化が進む中、すべての施設を現在と同じ形で維持し続けることは難しくなります。

必要な施設を残すためにも、利用実態と効果を厳しく確認することが必要です。

さらに土地を取得する今だからこそ確認したい

川越市は、現行のPFI事業が令和8年度末で終了することを受け、令和9年度からの次期事業者を募集しています。

市自身も、次期事業の目的として、公園全体のにぎわい創出と財政負担の軽減を掲げています。

この方向性は重要です。

今回の約8.37億円の土地取得は、単なる土地の買い戻しではなく、今後のなぐわし公園全体のあり方につながる判断です。

だからこそ、市議会では次の点を確認してほしいと思います。

なぜ今、この土地を取得する必要があるのか。
取得価格の根拠は妥当か。
健康交流広場には、今後いくらの整備費が必要なのか。
整備後の維持管理費はいくらになるのか。
PiKOAを含めた市の年間負担を、次期事業でどこまで減らせるのか。
利用者が一部の人に偏っていないか。
広く市民に利益が届く公園になるのか。

公園や健康施設を否定したいわけではありません。

むしろ、市民の健康や交流に役立つ場所だからこそ、持続可能な形で残していく必要があります。

約8.37億円の土地を取得し、その後も整備費や維持費を負担するのであれば、市は市民に対して、何を実現し、どのような効果を生み出すのかを具体的に説明すべきです。

「利用者が多いから必要」でもなく、
「赤字だから不要」でもない。

誰がどれだけ利用し、どのような公共的な価値を生み、そのために市民一人当たりどれくらい負担しているのか。

データに基づいて丁寧に判断することが、市議会の重要な仕事だと思います。

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著者

徳宮 勇気

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